OpenSeesPyにおける非線形応答解析のトライアル

 これまで特に弾性解析を扱ってきましたが、実際の構造物の部材は何らかの材料特性を有し、どこかのタイミングでその材料の許容する耐力を超えて降伏し、剛性が変わるというような非線形性を有します。そこまでの範囲を含めて応答解析などを実施したい場合、部材の材料非線形性を考慮した非線形解析を行うことが必要となります。そこでここでは、Openseespyを用いて試しに非線形応答解析を実行してみたいと思います。Openseespyには、いくつかの非線形性能が用意されています。Model CommandsのuniaxialMaterialcommandsをの項目をみますと、用意されている復元力特性を確認できます。

 これをみますと、例えば特に抽象的なばねモデルにおいて用いられそうな復元力特性に近しいものとして以下のようなものが用意されていることが分かります。

・完全弾塑性型(Elastic-Perfectly Plastic Material)

バイリニアで降伏後は応力一定となる。

・Hysteretic

バイリニア、トリリニアを想定し、そのエネルギー吸収や降伏後の塑性率に基づく除荷剛性を設定できる。

・MultiLinear

任意の多折れ線の非線形特性を設定できる。

 これらのうち、ここでは非線形解析のトライアルとして、Tri-linear特性を有するHystereticモデルを適用してみたいと思います。こちらのモデルは、部材降伏後のエネルギー吸収や塑性率に基づく除荷剛性の低下も考慮できそうなので、鉄筋コンクリート構造(RC)のフレームの復元力特性として用いられる非線形性能として近しいものとなると考えられます。モデルはこれまでに用いた5層のモデルを想定します。

 非線形解析においては、モデルの各部材に対して非線形性能を設定する必要があります。そこで、前の検討で弾性(Elastic)モデルとしていた、ばねモデルのmaterial特性を以下のようにhystereticのモデルで書き換えてみます。

#各層のせん断ばねをhystereticのモデルで設定
op.uniaxialMaterial("Hysteretic", 1, 1833.333333*kN_pond,0.0015*m_ft, 5500*kN_pond,0.015*m_ft,23320*kN_pond,1.5*m_ft,
                    -1833.333333*kN_pond,-0.0015*m_ft, -5500*kN_pond,-0.015*m_ft,-23320*kN_pond,-1.5*m_ft,1, 1, 0, 0,0.4)
op.uniaxialMaterial("Hysteretic", 2, 1616.666667*kN_pond,0.0015*m_ft, 4850*kN_pond,0.015*m_ft,21185*kN_pond,1.5*m_ft,
                    -1616.666667*kN_pond,-0.0015*m_ft, -4850*kN_pond,-0.015*m_ft,-21185*kN_pond,-1.5*m_ft,1, 1, 0, 0,0.4)
op.uniaxialMaterial("Hysteretic", 3, 1300*kN_pond,0.0015*m_ft, 3900*kN_pond,0.015*m_ft,17265*kN_pond,1.5*m_ft,
                    -1300*kN_pond,-0.0015*m_ft, -3900*kN_pond,-0.015*m_ft,-17265*kN_pond,-1.5*m_ft,1, 1, 0, 0,0.4)
op.uniaxialMaterial("Hysteretic", 4, 966.6666667*kN_pond,0.0015*m_ft, 2900*kN_pond,0.015*m_ft,12552.5*kN_pond,1.5*m_ft,
                    -966.6666667*kN_pond,-0.0015*m_ft, -2900*kN_pond,-0.015*m_ft,-12552.5*kN_pond,-1.5*m_ft,1, 1, 0, 0,0.4)
op.uniaxialMaterial("Hysteretic", 5, 566.6666667*kN_pond,0.0015*m_ft, 1700*kN_pond,0.015*m_ft,7640*kN_pond,1.5*m_ft,
                    -566.6666667*kN_pond,-0.0015*m_ft, -1700*kN_pond,-0.015*m_ft,-7640*kN_pond,-1.5*m_ft,1, 1, 0, 0,0.4)
 Hystereticモデルではバイリニア(あるいはトリリニア)の荷重変形関係の各折れ点の荷重変形関係を指定しています。そこで、上記では、下図に示すようなモデルのような形になるように、各層のばね特性としてひび割れ耐力、ひび割れ変形(トリリニアの第一折れ点)、降伏耐力、降伏変形(トリリニアの第二折れ点)、終局耐力、終局変形(最大点)を正方向載荷側、負方向載荷側のそれぞれ入力し、RC架構の復元力特性を模擬することを試みました。


 初期剛性は以前設定した線形モデルと整合するように設定し、ひび割れ時の剛性低下率α1=0.22、降伏時の剛性低下率α2=0.01となるように荷重変形関係における、ひび割れ時、降伏時、終局時の各ポイントの耐力、変形を設定しています。また、ピンチングはしないものとし、除荷剛性に考慮する係数beta=0.4としてみます。(各ステップの除荷剛性は各ステップの塑性率μ^(-beta)×初期剛性として算定されるようです。これはRC架構の復元力特性としてよく用いられるTakedaモデルと考え方と似てはいますが、少し違います。)

 また、応答解析を実行する際に非線形解析を実施することから、解析に用いるアルゴリズムをLinearAlgorithmからRaphsonNewton Algorithmに変更します。ニュートンラプソン法は非線形解析を反復計算により実行できる方法として知られています。
op.algorithm('RaphsonNewton')

 上記の変更を行った上で、これまでと同様にBCJ-L2波を対象として非線形応答解析を流してみます。非線形解析結果を線形解析の場合と比較したのが以下のグラフになります。モデル頂部の変形の時刻歴を示しています。


 このグラフをみますと、非線形解析を行った場合、部材の降伏を考慮したことで、全般的に線形解析の結果に比べて応答変形が大きくなり、解析終了後にも残留変形が残っていることが分かります。一方で、モデル頂部の加速度、速度については、非線形解析の場合の方が小さくなっていることが分かります。これは、モデルの降伏後その固有周期が大きくなり長周期化したことが影響していると考えられます。特に加速度については長周期化すると応答加速度が下がる傾向が応答スペクトルなどからも明確に確認できます。また、モデルの降伏後の吸収エネルギーにより付加減衰が生じたことも影響していると考えられます。
 また、部材が降伏し部材の応答が非線形領域に入っているか確認するため、モデル1層の荷重変形関係をみてみたものが以下のグラフです。

 上記のグラフより、設定した降伏耐力5500kNで降伏し、地震応答が非線形領域に入っていることが確認できました。また、除荷剛性も部材塑性率に応じて変化していることが確認できます。ただ、実際のTakedaモデルなどのRC架構の復元力特性に比べて、除荷剛性が大きくやや架構の吸収エネルギー(荷重変形関係における履歴ループの面積)を大きく評価してしまっている可能性があるため、除荷剛性のパラメータbetaをいじった時にどう変わるかを試しにみてみます。

 上記より、除荷剛性に関するパラメータであるbetaを0.6と大きくすると、除荷剛性は元々のものよりも小さくなり、履歴ループの面積、すなはち吸収エネルギーについても小さめに評価されていることが分かります。したがって、この辺りのパラメータを上手くチューニングしながら、日本の実務で使われているような実際に沿った履歴モデルによる検証をできるようにすることが必要となるかと思います。